三重県美術館でTHEO JANSEN(テオ・ヤンセン)の作品を見た時の記憶から。
氏の作品は、制作過程が実に興味深いものでした。生き物の進化のように目的に沿って合理的進行し、生まれ、また時に淘汰され、たどり着いた形が作品となっているのがテオ・ヤンセンの作品でした。
風の力を「食べて」そして「動く」。作品は進化の過程で生まれ、適応に成功したことで存在している作品と認識しました。
何かをデザインしようと思った時に生まれる様々な制限があります。氏の作品の場合は自然の力で動くこと。
その目的を達し、より効率的に動くために様々な工夫が凝らされ、その試行錯誤の軌跡が作品の進化の過程としてまとめられていました。小さな部品一つひとつが生物の進化の過程と同じように作り変えられ試されていくプロセスには「創造主」という言葉をが自然に頭に浮かんだ。
進化はどこまで続くのでしょう。
誠実なクリエイターの作品は、個々の作品が確かな進化のプロセスを経てある時点で完成作品として世に出て行きます。
さらに生涯をかけて作られたそれら一つひとつの作品がクリエイターの進化の軌跡としてその人を物語るはずです。
作り続けるには社会に受け入れられることが必要であり、制作を継続できることは幸せなことだと思います。命は有限です。制作できる限られた時間の中で新しい考え方や表現を社会に問うような制作ができればこの上ない至福のひと時になるのではないでしょうか。
テオ・ヤンセンの作品は私に、進化し続けることの大切さ、また進化こそがより良いものを作り出す最高のプロセスであることを伝えてくれた気がします。