クリムト展

豊田市美術館で鑑賞したクリムト展。

クリムトの作品からは、ミステリアスな不気味さと装飾的で崇高な美しさを同時に感じます。配色がとにかく美しくて人物表現にも惹きつけられます。豪華さと儚さ、美しさと怖さを併せ持った表現をしたい時には参考になるのでははいでしょうか。

愛知県美術館にある「黄金の騎士」は常設展示されているので身近に観られますが、クリムトだけが一堂に集まった展覧会は初めてでとても楽しみでした。

クリムトは、早くから装飾美術の業界で確固たる地位を確立し、その中で様々な挑戦的な作品作りをした作家と認識しています。銅板の作品がありましたが、その輪郭の美しさにはため息がでました。

作品は金箔を用いた黄金様式が有名ですが、私が好きなのは風景画を大判の真四角のキャンバスに描いたものです。
大きな真四角の絵は遠くからでもパッと目に留まります。

人間の目は左右に並んでいるので上下より左右方向に自然な広がりを認識するでしょう。そこへ真四角のサイズを持ってくると大雑把に表現すると違和感を感じ、それが独特の感覚を感じさせるのではないかと思っています。

今ではすっかり使うことは無くなりましたが、中盤カメラのハッセルブラッド500Cと50mmディスタゴンや80mmプラナーで主に風景の写真作品を作りました。ハッセルブラッドも真四角な撮影サイズで、独特な構図や表現が可能で大好きでした。真四角は上下左右どちらにも「広い」サイズと捉えることもできますね。

クリムトの風景画からは崇高なまでの静寂感を感じます。クリムトは普段の街での騒がしい生活と制作環境を逃れて静かな場所で作品作りを楽しんだとの事でしたから、その心の波動が絵にそのまま今もそこにあるのでしょうか。

周りを森に囲まれた場所で、明るくて広い空間に飾ると引き立ちそう。

もう一1点、どうしてクリムトの人物は不気味なのか?なぜそう感じるのかを考えてみました。それは表情や構図、モチーフからくるものも大きいでしょうけれど、肌の色の表現に、微妙に青が用いられて、それが肌の透明感とともに壊れそうで不安定な人間の有限の命、命あるものの哀れさを感じさせるからでしょうか。

最後に、ウィーン大学の大講堂の壁画を依頼されたクリムトが提案した絵が論争を巻き起こし、最終的には契約を破棄して報酬を返却し絵を持ち帰ったというエピソードについて。

絵はドクロや老いや病をリアルに表現していていてグロテスクな感じもしますが、きっとクリムトは誠実にテーマを捉えて提案したのだと思います。なぜならそれらはクリムトらしい作品なので私はそう感じました。しかし論争になってしまい、最終的には世に出なくなってしまった。

クリムトに依頼した大学はクリムトの作品を見てその上で依頼してきているのでしょうから、論争になってしまったのは意外だったが、提案された絵を受け入れたかったのだろうか。

自らの力を信じて誠実に提案したものが世に出せない苦しさはどんなものだったのか?もし完成していたらどんな仕上がりになっていたのか・・。

これからも1点でも多くのクリムトの作品を鑑賞したいと思います。

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